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血液型…A型/ 星座…牡牛座/ 性格…頑固な保守派/ 得意なこと…セリフの暗記/ 苦手なこと…手先を使うこと、音符を読むこと、整理整頓/ 口癖…あら、まあ!

2008年11月1日土曜日

『きのね』

宮尾登美子さんの小説に『きのね』というのがあります。大学生の頃、読みたいと思うような本が手元になくて、母に「何かお勧めない?」と聞いたら、この本を貸してくれたんです。借りたまま、今も私が持っているんですが。
現在の市川團十郎さんのご両親をモデルに描かれた小説です。(名前は変えられています)
これを初めて読んだ時には、歌舞伎のことはほとんど知らなかったんですが、あっという間に引き込まれてしまいました。今でも大好きで、枕もとに置いていて、時々ぱっと開いたところから読んだりしています。

映画でも舞台でも小説でも、何度でも見たい、何度でも読みたいと思うものは、登場人物に魅力があるんですよね。
『きのね』をお読みになった方ならお分かりいただけると思うんですけど、團十郎さんのお父さんをモデルにした堀留雪雄(松川玄十郎)というキャラクターが、とても魅力あるんです。短気だし、手は早い(女性を殴るシーンも多い)し、潔癖症だし、不器用だし…と欠点がたくさん書かれているのに、それでも魅力的。ストーリーが面白いことも大切なんですが、「なぜか惹かれる」と読者に思わせるキャラクターを描けるかどうかが、作家の力が表れるところなんでしょうね。
團十郎さんのお母さんをモデルにした光乃というキャラクターも、雪雄に比べると地味なんですが(主人公は光乃なんですけどね)、魅力的です。真面目で仕事ができるし、物分かりがいいという、完璧な人で、欠点と言えば、器量良しではなくて口が重いことぐらい?という「よくある主人公」のキャラなんですが、ひたすら雇い主に尽くしながら、その妻に嫉妬して離縁に(小さな)一役かってしまったり、愛人に嫉妬して相手を痛めつけるような夢を見たりと、現実的な悪い一面も持っていて、何だか憎めない。この二人を中心に、登場するすべての人たちにしっかりとした背景があって、それがぶれることなく描かれている。そして当然扱われる歌舞伎という世界も、非常に魅力的に描かれているわけです。
私が歌舞伎を見始めたのは、ここ1年くらいのことなんですが、すんなり入れてしまったのはこの小説のおかげなんです。

私が日本の作家の本を読むのは、主に明治から戦前にかけての人の場合が多いんですが、宮尾登美子さんと曽野綾子さんの作品は好きです。登場人物に読者が惚れてしまうくらいの魅力を持って描いてくれている本はいいですね。

ところで、なぜ今日この話を書いたかというと、単純に、今弟が観ているテレビ番組で今週の芸能ニュースをやっていて、團十郎さんが映ったからです。
團十郎さん、病気してから痩せてしまいましたよね。お父さんをモデルにした『きのね』の雪雄は結核にもかかったし、チフスにもかかったし、最後は癌で亡くなったから、團十郎さんも遺伝として病気になりやすいのかな、と思って。

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