今日読み終わった本です。
コンラッド作の『密偵』。
読み始めたのはちょっと前だったんですが、途中で他の本を読み始めてしまったりして、読み終わるのが遅くなってしまいました。
タイトルからすると、スパイ小説っぽいんですが、買う前の予想とはまったく違う物語でした。
読んでいて、話の筋に夢中になるタイプの作品ではありません。
人間の描き方が恐ろしいまでにリアルです。それに嵌れば一気に読めるでしょう。
私は子供のころから本をそれなりに読んでいるつもりだったんですが、この世の中には小説がまだまだまだまだ沢山あるので、最近少々焦り気味。別に世の中の本を読破しようなんて大それた計画は立てていませんが、一生の間に読める本は限られているでしょう?会社の同僚にグルメなお兄さんがいますが、彼は「一生の間にできる食事は限られている。1回1回おいしいものを食べないともったいない」って言うんですね。私は食べ物はどうでもいいのですが、本はできるだけいいものを沢山読みたい!と思っています。
さて、この『密偵』という本は、イギリスで実際にあったグリニッジ天文台の破壊未遂事件をヒントに書かれています。最初の方は破壊未遂事件を起こした人が主人公であるかのように描かれているんですが、途中からどんどん違う人たちの物語になります。明確な「主人公」が決まっているわけじゃないんですよね、実は。多く描かれているか否かという違いはありますが、登場するそれぞれの人物が主人公なんです。群像劇という程は多くないけれど。
進むに従って、読み手は意外な展開に翻弄されます。ストーリー性重視の話ではないんですが、扱う人物の順番によって読み手を翻弄するんです。すごい手法ですね。
正直、暗い話なので、好き嫌いはあると思います。この作品が発表された当時、好意的に受け取ってくれる人もいたようですが、多くは非難だったそうです。こんな風に描いちゃっていいの?っていうぐらい、人々の不完全さが浮き彫りにされています。
コンラッドの作品って、実は初めて読んだんですよね。イギリスの小説は好きなんですが、なぜかこれまで読んだことがなかった。いつかこの人の短編を読んでみようかな。
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