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2009年8月10日月曜日

「感覚」を教える

「ここから先、どのように授業を進めたらいいのか、考えてみたのですが、まったくわかりません。アドバイス願います」

週末提出された実習生の教案の最後に書かれていました。

この実習生が担当する課題は「誘い」の表現。つまり、「~しませんか?」「いいですね。しましょう!」のような表現です。

「誘い」が課題なんだから、授業の最後には友人を何かに誘うような会話練習をすればいいだろうが…と思ったんですが、そこでどうコメントを書くか迷いました。

私はどうして「誘いがテーマ」→「人を誘う会話練習をする」とつながるんだろう?と考えたんです。
現場経験のある日本語教師なら当たり前のことだと思います。私の場合は、教師養成講座を出ていないんですが、誘いがテーマになった日に会話練習をしないなんて思ったこともないので、現場に放り込まれてもあっさりやっていました。でも、実習生はそれがわからずに悩んでいるのです。「誘いだから会話でしょ」と言えば済むことですが、それではこの人がどこかの日本語学校に就職した時に、役に立つアドバイスにはならないでしょう。

テーマに沿った適切な練習が選べるようにするためには、どんなコメントをつければいいんだろう…。

教師経験のある方なら、同じことを迷ったことがあるのではないでしょうか。
自分が感覚的に身につけてしまっていることを、他の人に教えるためにはどうしたらいいか。
知識を教えるのは簡単です。知識ではなく「感覚」を教えるのは大変。特に自分がそこで苦労していない場合は。

悩んだ末、これは紙面のコメントだけでは伝えられないと思い、コメントに加えて直接話すことにしました。
「既習の“~が好きです”などの表現も使えますよ。“~ませんか”のような表現を、日常でどのように使っているか考えてみましょう」
教案にはこんなコメントだけ書いておきました。

朝、授業が始まる前に返却して、「授業後にお時間があれば、少し話しましょう」と言っておきました。
で、お昼休みに話しに行ったんですが、それまで実習生なりに私のコメントを見ながら考え、そしてやはり悩んでいました。
「先生、“好き”が使えるっていうのは、誘う前に好きかどうか聞けってことですか」
(…なんでそう「答え」を求めるんだ?)
「誰かを誘うときって、どんな風に話してます?」
「急には言わないです」
「そうですよね。じゃあ、どんな風に話を持って行きますか。たとえば、飲みに行くとしたら」
「お酒が飲めるか聞きます」
「そうですよね。どうやって聞きます?」
「お酒を飲めますか、とか、お酒が好きですか、とか」
「うん。可能形はまだ教えていないから・・・」
「“飲みますか”」
「そうですね。“飲みますか”とか“好きですか”とか使えますよね。じゃあ、好きだと言われたらどうしますか?」
「飲みに行きませんか」
「OKしてもらったら?」
「…え?そのあと?…飲みに行きます」
「それはすぐ行くってことですか。じゃあ、この時間に、今晩のことを誘うなら?」
「あ、どこで飲むかとか話します!」
「そうですよね。そんな話もしますよね。他には?」
「他に…?」
「だって、ホラ、何時頃出かけるんですか」
「ああ~、そうですよね。そういうこと決めないとヘンですよね」
「飲みに行くことと、待ち合わせ時間と行くところを決めたら、ほら、スケジュール帳に書けるだけの情報が得られるじゃないですか」
「ホントだ!」
「人を誘って約束を取り付けるというCan-do ですよね」
「ああ、なんとなく見えてきました~。会話もQAも何も思いつかなくて。初級って使える言葉が限られるし」
「使える言葉のリストをにらんで考えていても、何も思いつきませんよ。まず“誘い”の表現は自分の生活でどういう状況でどんな風に使っているかを考えて、会話になるならそれを書き出してみるんです。教えていない表現が出てきてしまうなら、そこを既習の表現に置き換えられないかって、そのあと考えればいいんですよ」
「先に会話を考えちゃう方法があるんですか!?」
「大切なのは、生活でどう使えるかということでしょ」
「そうですよね・・・。あ、なんかとっても勉強になりました!」

実習生はこのやりとりで喜んでくれました。でも、私の方は上手く指導できなかったという反省が…。
だって、上のやりとりって、ほとんど私の誘導じゃありません?本人に気付かせるように指導することが、まだできていないのです。
実習生がこの後他の課題に取り組んだとして、今日のやりとりをヒントに教案が作れるだろうかと考えると、自信がありません。

人を教えるって、難しいなぁ…。
教育実習を受け持つようになって、もう7,8年になると思いますが、未だに私は発展途上。適切な指導ができたと思えることはほとんどありません。

勉強、勉強…。

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